地球温暖化が異常気象の一因とされるなど、環境問題への関心は年々高まっています。猛暑や豪雨といった現象が身近になるなかで、「環境に良い選択をしたい」と考える消費者も増えていますが、手頃でわかりやすい商品やサービスなど、消費者ニーズに応える選択肢はまだ十分に整っていません。これは新しい事業テーマを模索している企業、とりわけ機動力のあるスモールビジネスにとっては大きなチャンスだと言えます。
本記事では、サステナブルな取り組みと利益を両立できる環境ビジネスのアイデアを、具体例とともに紹介します。

環境ビジネスとは
環境ビジネス(エコビジネス、グリーンビジネス)とは、地球環境の保全や改善に貢献する商品・技術・サービスなどを提供する事業です。環境への配慮を付加価値とし、環境負荷の低減につながる要素を持つ事業が広く含まれます。対象となる課題は、地球温暖化、大気汚染、水質汚濁、資源枯渇、廃棄物の増大など多岐にわたります。
環境省の調査によると、環境ビジネスの国内市場規模は、2023年度には約130兆円規模に達し、2000年比で約2倍に成長しています。また、消費者の約4割が「持続可能性が購買決定に影響する」と回答しており、環境配慮は購買行動にも影響を与えていることが消費者庁の調査からわかっています。

サステナブルな事業の構築が重要な理由
環境意識の高まり
ここ数年でSDGsという言葉は急速に浸透し、多くの企業が環境対応を経営課題として掲げるようになりました。消費者側でも環境配慮を重視する傾向が強まり、企業の姿勢がブランド選択に影響を与えています。そういった流れから、環境問題への対応は単なる企業内の取り組みではなく、市場全体の評価軸へと変化しています。
環境規制の強化
環境規制は継続的に整備されてきましたが、近年は脱炭素を軸に再び強化の動きが加速しています。パリ協定や日本のカーボンニュートラル宣言、プラスチック資源循環促進法の施行などにより、排出量の算定や情報開示が求められる流れが広がっています。
再生可能エネルギーの普及
CO₂排出削減が社会的なテーマとなるなか、太陽光、風力、バイオマス、地熱などの再生可能エネルギーへの注目が高まっています。企業が再生可能エネルギーを活用することは、コストを安定させるだけでなく、環境配慮型ブランドとしての信頼性向上にもつながります。
循環型社会の推進
大量生産・大量消費から、資源を循環させる社会への転換が進み、リユースやリペア、リフィル商品、回収・再資源化の仕組みなどが広がっています。消費者の間でも「長く使う」「捨てない」という意識が高まっており、企業は製品ライフサイクルを循環型にしていくことが求められています。
金融・投資環境の変化
金融市場でも環境対応は重要な評価項目になっています。環境や社会に配慮した企業に投資するESG投資の拡大やサステナビリティ関連融資の普及により、環境ビジネスを行う企業は資金調達面で有利になる傾向があります。
環境ビジネスの例12選
- 再生素材を使ったアパレル製品の販売
- 再生プラスチックを利用した製品の販売
- バイオマス容器・包装材を使った商品の販売
- 詰め替え対応商品の開発
- 再利用可能な容器の使用
- アップサイクル雑貨の製造・販売
- 竹・間伐材を使った製品の販売
- エコ洗剤・自然派化粧品の販売
- 太陽光・再エネを活用した製造
- サステナブル専門ECサイトの運営
- 修理・リペア事業
- カーボンオフセットに取り組む
1. 再生素材を使ったアパレル製品の販売
廃ペットボトルや回収繊維などを原料とする素材で衣料品を製造し、アパレルブランドを展開できます。スポーツウェア、企業ユニフォーム、エコバッグ、ノベルティなど用途は幅広く、OEMを活用することで個人事業主でも始められます。数あるアパレルブランドのなかで環境配慮型ブランドとしてブランディングしやすいのも魅力です。
たとえば、カットソー専門のOEM業者である有限会社Kauriでは、ペットボトルから生まれたフリースや漁網を再生したボタンなども扱っており、商品展開の幅も広がります。
2. 再生プラスチックを利用した製品の販売
再生プラスチックを使ってオリジナル商品を製造販売したり、再生プラスチックを使った製品を仕入れて販売したりすることでも環境ビジネスを始められます。
たとえば、再生プラスチックのオリジナル雑貨BOPEなどを扱う株式会社恵比寿レコードでは、使用済みレジ袋を再生したバッグやアクセサリーなどのOEMも手がけており、最小ロット300個から依頼できます。他には、海洋ごみから雑貨を製造するbuøy(ブイ)では、卸売りに対応しています。
3. バイオマス容器・包装材を使った商品の販売
植物由来原料や生分解性素材を活用した容器・包装材を使った商品を販売することも環境ビジネスの例の一つです。食品トレー、テイクアウト容器、化粧品ボトル、EC配送用緩衝材など幅広いアイテムがあるため、自社で扱う商品に合った容器や包装材を選べます。なかには、竹本容器のように植物由来容器をオーダーメイドで製造してくれるメーカーもあります。
バイオマス容器を使うことで、エコパッケージとして競合企業と差別化しやすくなるのも魅力です。
4. 詰め替え対応商品の開発
洗剤や化粧品、シャンプー、調味料などを詰め替え前提で開発することで、容器の廃棄量を削減する環境ビジネスを展開できます。本体販売とリフィル販売を組み合わせることで継続した収益も期待でき、定期購入やサブスクリプションとしても販売できます。ごみが減り、価格が割安になる詰め替え商品は、化粧品のマーケティング戦略としても効果的な手法です。
5. 再利用可能な容器の使用
飲食店やイベントなどで、使い捨て容器を再利用可能な容器に変更することも環境ビジネスモデルの一つです。Megloo(メグルー)のようなサービスを使えば、容器のレンタルだけでなく、回収・洗浄なども代行してもらえる場合もあり、導入のハードルが低くなります。
6. アップサイクル雑貨の製造・販売
廃材や不要資材などをデザイン性の高い雑貨へ再加工する環境ビジネスもあります。バッグ、インテリア小物、文具など一点物としての価値を打ち出すことができ、限定販売やネットショップと相性が良いのが特徴で、ブランド構築や訴求ポイントの活用が成功のカギとなります。
自分で製造する以外にも、アップサイクル製品製造サービスを提供する企業に依頼する方法もあります。たとえば、販促グッズの企画・製造を行う株式会社ヒロモリは、中古着物のアップサイクルによるクッション、ペンケースなど、さまざまな商品を提案しています。
7. 竹・間伐材を使った製品の販売
放置竹林や間伐材を活用した文具やインテリア雑貨などを販売するのも環境ビジネスの例です。地域資源活用と森林保全を両立でき、デザインによってはインバウンドや越境ECでの販売も見込めます。FRONTIER JAPAN株式会社では、国産間伐材を使った商品開発を企画から製造までサポートしてくれるため、商品開発の経験がなくても始めやすくなっています。
8. エコ洗剤・自然派化粧品の販売
植物由来成分や酒造副産物などを活用した低環境負荷商品を開発・販売する環境ビジネスモデルです。洗濯洗剤、台所用洗剤、スキンケア商品など日常消費財が中心で、成分の透明性や安全性が訴求ポイントになります。OEMで参入できるため、スキンケアブランドを立ち上げたい人にもおすすめのビジネスモデルです。たとえば、ProCosmetics(プロコスメティクス)では、天然素材を100%使用した化粧品や洗剤など幅広い種類の製品を、ホワイトラベルとして500個から注文できます。
9. 太陽光・再エネを活用した製造
製造工程に太陽光や風力などの再生可能エネルギーを導入し、その取り組みを付加価値とする環境ビジネスモデルです。食品、酒類、アパレルなど幅広い業種で活用できるのが特徴で、再生エネルギーの利用をブランドストーリーとして利用することもできます。
たとえば、ジンを製造する株式会社五島つばき蒸溜所は、製造に必要な電力を100%再生可能エネルギーでまかなっています。このリニューアル工事の資金をクラウドファンディングで集めることで、環境に対する取り組みを潜在顧客にまで拡散し、ファンの育成にもつなげています。
10. サステナブル専門ECサイトの運営
環境配慮型商品やフェアトレード商品に特化したネットショップを運営する環境ビジネスの一例で、衣料品、食品、日用品など多様な商品を取り扱えます。商品を仕入れて販売する以外にも、委託販売を募って出店手数料で収益化することもできます。サステナブルなビジネスはSDGsに対する意識の高い消費者を集めやすいニッチ市場で、リピーターも獲得しやすいのが魅力です。
たとえば、フェアトレードカンパニー株式会社は、フェアトレードの認証を受けた環境にやさしい衣料品や雑貨を販売しています。
11. 修理・リペア事業
アパレル、バッグ、靴、家電などを修理・再生するサービスも環境ビジネス例の一つです。循環型経済の実践例として注目されており、店舗型、訪問型、オンライン受付型など多様な展開が可能なほか、定期メンテナンス契約も収益源になります。
高品質なカシミヤニットを国内製造・販売するUTO(ユーティーオー)では、リペアサービスを提供することで、商品を長く使ってもらえるシステムを構築しています。他にも、不要になった商品を引き取って再生材として糸に戻し、新たにアップサイクル商品を製造するなど、さまざまな取り組みを行っています。
12. カーボンオフセットに取り組む
商品の製造や販売時に排出される二酸化炭素量を算定し、環境保護団体への寄付や植樹などを行うことでカーボンオフセットに取り組むモデルです。商材やサービスを問わず環境問題対策に取り組むことができ、その姿勢を明確に示せる点が特徴です。
たとえば、エシカル商品を扱うBorderless Creations(ボーダレスクリエーションズ)は、NPOの1% for the Planet(英語)への参加や、ECサイト構築で利用しているShopify(ショッピファイ)のPlanetアプリの使用で売り上げの一部を寄付し、カーボンニュートラルを目指しています。
まとめ
環境問題への関心が高まっている現代では、環境への配慮はソーシャルエンタープライズだけでなく多くの企業に求められる姿勢になってきています。また、環境問題に取り組むことは、社会貢献や社会的責任を果たすことになるだけでなく、経営戦略やマーケティング戦略としても有効です。
スモールビジネスでも始めやすい環境ビジネスには、再生素材の活用や詰め替えやリペアによる商品ライフサイクルの延長、カーボンニュートラルへの取り組みなどさまざまなものがあります。環境ビジネスを展開するうえで重要なのは、ただ課題に取り組むのではなく、環境に対する企業の姿勢を明確に示し、その取り組みを透明性をもって開示することです。そうすることで、消費者や取引先、投資家からの信頼につなげられ、収益性のある持続可能なビジネスになります。
環境ビジネスは、地球を守るための選択であると同時に、成長市場に参入することでもあります。真摯な姿勢で取り組む企業こそが、これからの市場で持続的な競争力を確立していくでしょう。
環境ビジネスに関するよくある質問
環境ビジネスとは?
環境ビジネスとは、地球温暖化対策や資源循環、廃棄物削減などの課題解決に貢献する商品やサービスを提供する事業です。環境への配慮そのものを付加価値とし、社会的意義と収益性の両立を目指します。
環境ビジネスの例にはどのようなものがある?
再生素材アパレルや修理・リペア事業、アップサイクル雑貨の製造販売、再生可能エネルギーの活用などがあります。日用品からBtoB向け設備まで環境ビジネスの対象は幅広く、業種を問わず参入できる可能性があります。
日本の環境ビジネス企業の成功例は?
- 株式会社アシックス:設計・製造段階からリサイクルを考慮した循環型ランニングシューズを開発
- 株式会社浅井農園:工場の排熱を利用してトマトを栽培
- 日本盛株式会社:副産物の米ぬかを原料とした洗顔料を開発
- 株式会社グリーンエース:未利用野菜を粉末加工し、ドレッシング、スープ、パンなどに利用
- アスカカンパニー株式会社:製造過程で発生する廃プラを再利用して包装容器を製造
環境ビジネスで胡散臭いと思われないようにするにはどうすればいい?
環境ビジネスで胡散臭いと思われないようにするためには、具体的な取り組み内容の説明やデータの開示、第三者機関による監査や認証、継続した取り組みや改善などが大切になります。
また、グリーンウォッシング(環境に配慮しているように見せかける誇大なマーケティングなど)にならないよう、効果のある取り組みや実現可能な課題解決方法を採用するようにしましょう。
文:Norio Aoki





