非営利の活動を行うにあたり、NPO法人を設立することで、社会的な信頼を得やすくなり、事業や活動を進めやすくなります。本記事では、NPO法人設立までの流れや条件、必要書類を中心に、設立時に押さえておきたいポイントを整理して解説します。NPO法人の立ち上げを検討している人や企業は参考にしてください。
目次
NPO法人とは
NPO法人とは、社会的な課題の解決や公益性の高い活動を継続的に行うことを目的として、特定非営利活動促進法にもとづいて設立される法人です。
収益を伴う事業を行うこと自体は禁止されていませんが、事業によって得た収益はソーシャルエンタープライズのようには構成員に分配せず、福祉、教育、地域づくりなどの社会貢献活動に充てる必要があります。
NPOとNPO法人の違い
NPO(Non-Profit Organization)は、利益の分配を目的とせず社会貢献活動を行う団体の総称で、法人格の有無は問いません。一方、NPO法人は、その中でも法律にもとづいて法人格を取得した団体を指します。
NPO法人と認定NPO法人の違い
NPO法人の中でも、直前の2事業年度における活動実績と公益性が評価され、所轄庁の認定を受けたものが認定NPO法人となります。
NPO法人を設立するメリット・デメリット
メリット
- 社会的信頼が高くなる:NPOは他の任意団体や一般財団法人のような非営利企業と比べて認知度が高く、営利目的団体ではないということが一般的に知られているため、他機関との連携や従業員の雇用なども行いやすくなります。
- 活動や資産を管理しやすくなる:法人格を取得すると、団体が独立した主体として扱われ、代表者個人ではなく団体名義で契約の締結や口座開設、土地・建物の登記ができるようになり、活動や資産を組織として管理しやすくなります。
- 税制の優遇措置が受けられる:収益事業から生じた所得に対してのみ法人税が課税されるなど、NPO法人には税制上の優遇措置もあります。さらに、認定NPO法人になると個人の税額控除などの優遇措置も受けられます。
デメリット
- 設立や運営に時間と手間がかかる:NPO法人の設立には書類の手続きが必要で、完了までに数カ月を要します。設立後も、事業報告書の作成や各種届出など、継続的な事務負担が発生します。
- 人員や活動分野に一定の制約がある:設立には10人以上の社員や複数の役員体制が求められます。また、活動は法律で定められた分野に限定され、変更や追加を行う場合は定款変更や所轄庁の再認証が必要になります。
- 情報公開と透明性が求められる:毎年度の事業報告書や計算書類、役員名簿などを作成・提出し、閲覧可能な状態にしておく義務があります。
NPO法人設立の条件
NPO法人として設立認証を受けるには、特定非営利活動促進法で定められた以下の要件を満たす必要があります。
1. 人員に関する要件
- 社員が10人以上いること:法人の意思決定に関与する正会員が10人以上必要
- 加入・脱退が不当でないこと:社員の加入や脱退について、特定の人を排除するような不当な条件を設けないことが求められる
- 役員体制を整えていること:少なくとも3人以上の理事と1人以上の監事が必要で、役員のうち報酬を受け取る人の割合は役員総数の3分の1以下とする
2. 活動に関する要件
NPO法人は、特定非営利活動を主たる目的としていることが前提です。主な活動分野には、次のようなものがあります。
- 保健、医療、福祉の向上を目的とする活動
- 社会教育や子どもの健全育成に関する活動
- まちづくり、環境保全、地域安全に関する活動
- 学術、文化、芸術、スポーツの振興
- 国際協力や人権の擁護、平和の推進
- 災害救援や消費者保護に関する活動
- 経済活動の活性化や雇用機会の拡充を支援する活動
- 上記の活動を行う団体の支援や連絡、助言を行う活動
- そのほか、条例で定められた準ずる活動
3. 組織の性質に関する要件
以下のような団体は、NPO法人の認証を受けられません。
- 宗教活動や政治活動を主な目的とする団体
- 特定の公職者や政党を支持・反対することを目的とする団体
- 暴力団やその関係者の支配下にある団体

NPO法人設立の流れ
1. NPO法人設立の申請
NPO法人を設立するには、まず所轄庁へ設立認証の申請を行う必要があります。所轄庁とは、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県や指定都市などを指します。たとえば、東京都内でNPO法人を設立する場合は、東京都が所轄庁となり、生活文化局 都民生活部 管理法人課が窓口になります。
申請時には、NPO法人としての目的や運営体制、事業内容が法令の要件を満たしていることを示すため、複数の書類を提出する必要があります。以下は必要な書類の一覧です。
- 設立認証申請書:NPO法人設立認証を申請することを確認する用紙
- 定款:設立を希望するNPO法人の名称、所在地、目的、事業内容、役員構成などの規則を証明する書類
- 役員名簿:設立当初の役員について、氏名や住所(または居所)、報酬の有無を記載した名簿
- 就任承諾書および誓約書の謄本:各役員が就任を承諾し、特定非営利活動促進法の要件に収まることを誓約した書類
- 役員の住所または居所を証明する書類:住民票の写しなど
- 社員のうち10人以上の者の名簿:社員が10人以上いることを示すため、10人以上の氏名と住所(または居所)を記載した名簿
- 確認書:宗教活動や政治活動を主たる目的としていないこと、暴力団などと関係がないことを確認する書類
- 設立趣旨書:NPO法人を設立する目的や、申請に至った背景を説明する書類
- 設立についての意思の決定を証する議事録の謄本:設立総会での決議内容や出席状況などをまとめた議事録
- 設立当初の事業年度および翌事業年度の事業計画書:2事業年度分の事業内容や実施計画を記載した書類
- 設立当初の事業年度および翌事業年度の活動予算書:2事業年度分の収支計画を、取り組む事業ごとにまとめた書類
2. 申請内容の公開
申請書類が所轄庁に受理されると、所轄庁は法人の情報と書類の一部をインターネットや公報などを通じて公開します。これは、法人の目的や運営体制を広く示し、透明性を確保するための手続きです。主に以下の情報が公開されます。
- 申請年月日
- 法人の名称
- 代表者の氏名
- 主たる事務所の所在地
- 定款に記載された活動目的
役員名簿については、住所や居所などの個人情報を除いた内容のみが公開されます。公開期間は2週間とされています。
3. 設立認証の判断
書類の公開期間が終了した後、所轄庁は提出書類の内容を確認し、NPO法人としての要件を満たしているかを審査します。特別な理由がない限り、公開期間終了後から2カ月以内に結論が出て、その結果が申請者へ書面で通知されます。
4. 法人成立後の登記・届出
設立認証の通知を受けた日から2週間以内に、法務局で設立登記を行う必要があります。この登記が完了してはじめて、NPO法人は法律上の法人として扱われます。
登記後は、登記事項証明書と財産目録を添えて、設立登記が完了した旨を所轄庁へ届け出ます。これで設立手続きは完了です。
設立認証を受けたにもかかわらず、6カ月以上登記を行わないまま放置すると、認証が取り消される可能性があります。
NPO法人設立後の主な手続き
NPO法人は、設立登記が完了した後も、法令や定款にもとづいて対応すべき手続きがあります。主なものは次のとおりです。
- 事業報告書等の作成・提出:事業年度終了後3カ月以内に、事業報告書、計算書類、役員名簿等を作成し、所轄庁へ提出する。また、これらの書類を事務所に備え置き、いつでも閲覧できる状態にしておくことが求められる
- 納税:活動内容によっては、法人税、消費税、地方税などの課税対象となるため、税務の取り扱いについて税務署や自治体への確認が重要
- 職員の雇用:有給の職員を雇用する場合、一般の法人と同様に、労務管理や社会保険に関する手続きが必要
- 定款の変更:設立後に活動分野を変更・追加する場合、定款を変更したうえで、所轄庁の認証が必要
NPO法人設立にかかる時間
NPO法人は、申請から登記完了までに3~4カ月程度かかります。申請書類の準備や提出、法人登記に加えて、所轄庁へ提出した書類が公開される2週間の縦覧期間と、所轄庁によるおおよそ2カ月の審査期間が必要となるため、これらを見越して計画的に準備を進めましょう。
NPO法人設立の費用
NPO法人の設立には、主に次のような費用が発生します。
- 法人の印鑑作成費用:実印や銀行印などの作成費用で、約5,000~30,000円
- 印鑑証明書の取得費用:1通あたり約400円
- 住民票の取得費用:役員分の住民票を取得するための費用で、1通あたり300円程度
- 登記事項証明書の取得費用:登記完了後に必要となる書類の取得費用で、1通あたり約600円
- 通信費・交通費:申請や届出に伴う実費
設立手続きや書類の作成などを行政書士などの専門家に依頼する場合は、10~30万円程度の費用がかかることがあります。
なお、株式会社などの一般的な法人と異なり、NPO法人は登録免許税の対象外であり、定款認証に関する手数料も不要です。また、最低資本金のような要件も設けられていないため、設立時点で多額の資金や財産がなくても法人化が可能です。

NPO法人の主な資金調達方法
NPO法人の主な資金調達方法は次のとおりです。
- 会費収入:正会員や賛助会員から定期的に集める会費で、団体運営の基盤となる資金
- 寄付金・募金:個人や企業からの寄付、街頭募金、クラウドファンディングなどによる資金
- 補助金・助成金:国や地方自治体、民間財団などから交付される支援金
- 事業収入・受託事業収入:商品販売や講座・イベントの開催、行政や公的機関からの事業受託による収入
- 融資・借入:金融機関や役員・関係者などからの借入による資金
NPO法人が活用できる助成金
ドコモ市民活動団体助成事業
ドコモ市民活動団体助成事業は、NPO法人モバイル・コミュニケーション・ファンド(MCF)が実施する助成事業です。全国で活動する非営利団体を対象に、子ども分野と環境分野における市民活動を支援しています。
子ども分野
- 対象となる活動:不登校・ひきこもりの子どもや保護者への支援などの健全育成活動や、子ども食堂をはじめとする経済的困難を抱える子どもへの支援活動
- 助成金額:1団体あたり上限80~110万円
- 助成期間:原則1年(年度ごとの申請により、最長3年間の継続助成が可能)
- 公募期間:毎年2~3月頃
環境分野
- 対象となる活動:希少な動植物の保護など生物多様性の保全活動や、自然共生サイトの整備・活用などの30by30(サーティ・バイ・サーティ)目標達成に貢献する活動
- 助成金額:1団体あたり上限110万円、30by30目標貢献活動は最長2年間で上限300万円
- 助成期間:原則1年、30by30目標貢献活動は原則2年間
- 公募期間:毎年2~3月頃
金融相談等活動助成
金融相談等活動助成は、一般財団法人ゆうちょ財団が実施する助成事業です。高齢者や大規模災害の被災者、障がいのある人を対象とした金融相談活動に取り組む団体を支援しています。
- 対象となる活動:金融相談会の開催や、金融相談員の育成・確保に関する活動など
- 助成金額:1活動あたり上限12万円、1活動が複数イベントで構成される場合は1イベントあたり上限12万円、助成総額の上限は60万円
- 助成期間:最長3年、2年以上の助成を希望する場合は、年度ごとに継続申請が必要
- 公募期間:毎年10~11月頃
アウトドア環境保護基金
アウトドア環境保護基金は、一般社団法人コンサベーション・アライアンス・ジャパン(CAJ)が運営する助成事業です。アウトドアフィールドの保全を目的とした活動に取り組む団体へ支援を行っています。
- 対象となる活動:生物多様性に富んだエリアを野生生物の生息地やレクリエーションの場として保全する活動や、アウトドア活動の持続性や質の向上につながる取り組みなど
- 助成金額:1回あたり上限50万円
- 助成期間:継続支援は原則として最長3年間まで
- 公募期間:前期の締め切りは8月中旬、後期の締め切りは2月中旬
まとめ
NPO法人の設立には大きな費用はかかりませんが、認証申請のための書類の準備や所轄庁による審査、登記などには、一定の時間を要します。また、法人格を取得した後は、一般的な法人と同様に、継続的な運営や管理への対応が求められます。
設立による効果と、時間や運営面での負担を踏まえ、活動内容や体制を見極めたうえで、計画的にNPO法人設立を進めましょう。
NPO法人設立に関するよくある質問
NPO法人は誰でも設立できる?
NPO法人は、誰でも自由に設立できるわけではありません。一定の要件を満たした組織体制を整えたうえで、所轄庁の認証を受ける必要があります。
NPO法人を立ち上げる条件は?
主な条件は次のとおりです。
- 特定非営利活動を主たる目的としていること
- 営利を目的とせず、利益を構成員に分配しないこと
- 社員が10人以上いること
- 3人以上の理事と1人以上の監事を置くこと
- 宗教活動や政治活動を主目的としないこと
NPO法人設立にはいくらかかる?
NPO法人の設立には、印鑑作成費用や住民票・証明書の取得費など、数万円程度の費用がかかります。登録免許税や定款認証手数料はかかりません。設立の手続きを行政書士などに依頼する場合は、10~30万円程度の費用が発生することがあります。
NPO法人の設立までにかかる期間は?
申請から登記完了まで、おおむね3~4カ月程度かかります。これは、申請書類の公開期間が2週間、所轄庁による審査期間が約2カ月定められているためです。
NPO法人設立で助成金はいくらもらえる?
助成額は活動分野や規模によって異なりますが、たとえば金融相談イベントを1回実施する場合は10万円前後、ひきこもりの子ども支援など継続的な活動では80~110万円程度の金額が設定されている助成事業もあります。ただし、助成金の多くは、NPO法人を設立したこと自体に対して支給されるものではなく、具体的な活動を対象に交付されます。
文:Hisato Zukeran





