世界中で1日に送信されるメールは3,760億通を超えるといわれており、メールマーケティングキャンペーンで注目を集めるのは容易ではありません。しかし、メールは特にコンバージョン率の高いチャネルであるため、取り組む価値は十分にあります。キャンペーンを改善し、受信トレイで目立つためには、AI(人工知能)や機械学習アルゴリズムの活用を検討すべきでしょう。
AIを活用したメールマーケティングは、人間のライターによる繊細な表現と、AI技術の精度を組み合わせた手法です。マーケターはAIツールを使ってユーザー行動を分析し、件名を作成し、配信の最適化を行い、顧客エンゲージメントの向上につなげています。
この記事では、AIを活用したメールマーケティングの概要と、マーケティングチーム向けのおすすめツールについて詳しく解説します。
AIメールマーケティングとは?
AIメールマーケティングとは、コンピューターアルゴリズムを活用して、より具体的かつ最適化されたキャンペーンを構築する手法です。顧客行動を分析し、コンテンツの作成を自動化・パーソナライズする機械学習技術により、メールマーケティングチームの開封率向上を支援します。
AIメールマーケティングツールは、メールマーケティング担当者の業務を補完する役割を果たします。担当者がメールリスト内の特定のセグメントに向けてパーソナライズされたメールを作成し、そのうえでAIアプリケーションに件名の提案、無効なメールアドレスの検出、過去のコンバージョン率に基づいた最適な配信時間でのスケジューリングなどを任せることができます。
メールマーケティングでのAI活用法9選
AIをメールマーケティングに取り入れることで、時間を節約しながらクリエイティブなプロセスを加速できます。リード獲得、売上向上、顧客インサイトの把握を目指す場合、AIプラットフォームは次のようにメールマーケティング戦略の最適化に役立ちます。
1. スマートセグメンテーション
AIは、人口統計データ、購入履歴、エンゲージメントレベルなどを分析し、メールをセグメント配信できます。たとえば、女性向けと男性向けのアパレル商品を販売している場合、購入履歴に基づいて顧客を分類し、それぞれにより関連性の高いメールを配信できます。
Shopifyのセグメンテーション機能を使えば、管理画面から直接、動的な顧客グループを作成できます。あらかじめ用意されたテンプレートを基に、人口統計、購入パターン、顧客メタフィールドなどをカバーするドラッグ&ドロップ式のフィルターで柔軟に調整可能です。
作成した任意のセグメントは、Shopify Emailや割引ルール、Flowのオートメーションへ直接連携でき、大規模なパーソナライズキャンペーンの実行が可能です。掃除機ブランドのAirsignは、Shopify内で購買意欲の高いセグメント向けに割引キャンペーンを実施し、「そのうち約30%がコンバージョンに至った」と報告しています。
2. メールのパーソナライズ
AIは顧客データを分析し、個々の好みや行動に合わせた高度にパーソナライズされたメールコンテンツを作成できます。たとえば、購入履歴をもとに、生成AIプログラムが特定の受信者に最適化されたメール全体を自動生成することも可能です。
Shopify Messagingは、こうしたAI機能に加え、コマースに特化した強力な機能を備えています。メールエディター内ではShopify Magicが件名や本文、画像を提案し、スムーズにメールを作成できます。また、価格やチェックアウトリンクなどのストアの最新データを自動で反映するため、顧客は「今すぐ購入」ボタンから簡単に購入へ進むことができます。
3. 送信時間の最適化
マーケティングメールは、受信者に開封されて初めて効果を発揮します。AIは、各受信者の過去の行動データをもとに最適な送信時間を算出し、開封率やエンゲージメントの向上を図ることができます。
Shopify Messagingを使えば、オーディエンスごとに送信時間を最適化できます。また、すべてのストアに毎月10,000通の無料メール送信枠が用意されており、追加分は1,000通あたり1ドル(約155円)から利用可能です。
4. 件名の提案
件名はメールの成果を左右する重要な要素です。受信者がメールを開封するか、そのまま削除するかを決めるポイントになります。
自然言語生成機能を備えたShopify MagicなどのAIライティングツールを活用すれば、マーケティングメールの件名を自動で提案できます。また、自分で件名を作成したい場合でも、作成した内容を分析し、より魅力的にするための改善案を提示してくれます。
5. コンテンツ作成
ライティングに自信がない場合は、生成AIを活用できます。AIメールマーケティングツールは、自然言語処理(NLP)を用いてメール本文を作成できます。
ただし、コピーがブランドボイスを正確に反映しているか、内容に誤りがないかを確認するために、人間のマーケターによるチェックは欠かせません。
6. A/Bテスト
AIはA/Bテスト(パフォーマンスを比較するために2つのバージョンのメールを配信する手法)を自動化し、その結果を分析できます。複数のバリエーションを検証することで、開封率やクリック率からインサイトを抽出し、その結果を反映させながらキャンペーンの成果を継続的に改善できます。
7. データ分析
AIは顧客の行動や成果を予測できます。過去のデータや既知のユーザー属性をもとに、将来購入される可能性の高い商品を推定し、より効果的なターゲティングキャンペーンの構築を支援します。
キャンペーン終了後はもちろん、実施中であっても、AIはパフォーマンスデータを分析し、今後の施策に役立つ具体的なインサイトや改善提案を提示できます。これは顧客ライフサイクル全体において有効です。
Shopify Sidekickを使えば、対話形式でキャンペーンデータを取得できます。
たとえば、「先週、メール経由の収益が減少した理由は?」といった平易な英語で質問すると、Sidekickがキャンペーン、商品カタログ、在庫状況、顧客セグメントなどのデータを分析し、要因を特定します。さらに、「件名を調整する」「別の時間帯に送信する」といった改善案も提案します。レポートの作成、セグメントの作成、割引コードの設定なども可能で、すべてユーザーの承認のもとで実行されます。
8. スパムフィルター回避
メールがスパムフォルダに振り分けられると、コミュニケーションの成果に悪影響を及ぼします。AIツールは、GoogleやYahooなどのプロバイダーが定める基準を満たす件名の提案や送信者アドレスの最適化を行い、スパム判定を回避しやすいメール作成を支援します。これにより、ターゲットメールキャンペーンが意図した受信者に届く可能性を高めます。
9. ワークフロー自動化
AI搭載プログラムは、メール管理を包括的に自動化できます。下書きの作成、配信スケジュールの設定、商品ページへのリンク挿入、返信管理、メールリストの更新などが含まれます。メール配信を自動化することで、チームはより高度な戦略立案やビジネス運営に集中できるようになります。
メール配信率とコンプライアンス規則
AIはより多くのことを成し遂げる力を与えます。購読者により多くのメールをより速く送信できます。しかし、それには制限が伴います。
例えば、Googleは2024年にポリシーを変更しました。24時間以内にGmailユーザーへ5,000通以上のメールを送信するなど、バルク送信者と見なされるドメインは、送信者情報の認証とコンプライアンスの維持が求められます。これを満たさない場合、自動スパムフィルタリングや配信拒否のリスクが高まります。
Googleのガイドラインでは、スパム苦情率を0.3%未満(理想的には0.1%未満)に抑えることが推奨されています。受信者がメールをスパムとして報告した時期やドメイン評価を把握するには、GoogleのPostmaster Tools(英語)を確認するとよいでしょう。
また、ドメインにDMARCポリシーとShopifyのCNAMEレコードを設定し、ShopifyのSPF(Sender Policy Framework)およびDKIM(DomainKeys Identified Mail)レコードと連携させることも重要です。これにより、メールの正当性が証明され、配信率の向上につながります。
最も重要なのは、コンテンツと受信者の受信トレイを尊重することです。明確で正確な件名と表示名を使用し、レシートとプロモーションなど異なる種類のメッセージは別の送信者アドレスから送信しましょう。また、メールリストを購入したり、購読者を自動的にオプトインさせたりすることは避けてください。スパム報告が増えるとドメインの評価が下がり、配信率の低下につながります。
AIメール送信におけるプライバシーと倫理
AIは大規模なパーソナライゼーションを可能にしますが、キャンペーンがプライバシー法に違反したり、偏りのある表現を含んだりすれば、顧客の信頼を損なう可能性があります。
EUのGDPRでは、メールアドレスは個人データとして扱われます。購読者のデータを処理またはプロファイリングする前に、明示的な同意を得る必要があります。カリフォルニア州のCCPAでは、居住者に対してデータの開示請求権、削除請求権、販売や共有のオプトアウト権が認められています。違反した場合、1件あたり最大750ドルの罰金が科される可能性があります。
これらの規制を遵守するために、以下を徹底しましょう。
- タイムスタンプ付きの記録で、各購読者の同意を文書化する
- 購読者データの利用目的を事前に明示する
- ワンクリックでオプトアウトできる仕組みを提供する
- 顧客からのデータ削除依頼に適切に対応する
生成AIをメール作成に使用する場合でも、人による確認を欠かさないことが重要です。AIモデルは誤りを含む可能性があり、意図せず不適切または偏りのある表現を用いることもあります。「送信」を押す前に、メールマーケティングやインクルーシブな表現に詳しい担当者が最終確認を行いましょう。
メールマーケティング用AIツール8選
市場には、最適な送信時間の提案からメールキャンペーンの下書き・配信まで対応できるソフトウェアが数多く存在します。ここでは、AIをさまざまな形で活用している評価の高いメールマーケティングツールを、順不同で8つ紹介します。
1. Shopify Messaging
Shopify Messagingは、コマース向けに設計されたメールマーケティングツールです。テンプレートやレポート機能、オートメーションワークフローなど、販売促進に必要な機能を備えています。数分でブランドに沿ったメールを作成でき、1つのダッシュボードでキャンペーン全体を管理できます。
Shopify MagicがAIによるコンテンツ生成をサポートします。ワンクリックで、ストアのデータに基づいたマーケティングコピーや画像を生成可能です。また、特定の顧客セグメントにキャンペーンを配信し、その結果をもとに継続的な最適化を行えます。
料金体系はシンプルで、毎月10,000通まで無料。その後は1,000通あたり1ドル(約155円)で利用できます。
2. Zoho Campaigns
Zoho Campaignsは、A/Bテストやインタラクティブメール、配信率向上機能など、AIを活用したマーケティングオートメーション機能を提供しています。
Eコマース重視のソリューションとして、Shopifyユーザー向けの機能も提供しており、カゴ落ちメールの自動送信や購入履歴に基づくターゲティングなどを利用できます。
価格:無料プランあり。有料プランは月額360円から。
3. Mailchimp
Mailchimp(英語)は、人口統計データや購入行動に基づくオーディエンスセグメンテーション、最適な配信時間を提案する予測送信機能など、AI機能を備えた人気のメールマーケティングプラットフォームです。
価格:無料プランあり。AI機能を利用するには有料プランが必要で、月額1,150円から。
4. Omnisend
Omnisend(英語)はEコマース向けに設計されたプラットフォームで、AIを活用した商品レコメンド、カート放棄リマインダー、購入履歴に基づく自動セグメンテーションなどの機能を備えています。
価格:限定的な無料プランあり。スタンダードプランは月額11.20ドル。
5. ActiveCampaign
ActiveCampaign(英語)は、内蔵AIを活用してリードスコアリング(人口統計やソーシャルメディアの利用状況などをもとにリードを評価)、カスタマージャーニーの設計、購読者の行動に基づくパーソナライズドメールの配信などを行えます。送信時間の最適化からコンテンツのパーソナライズまで、メール施策を幅広く自動化できます。
価格:月額15ドル(約2,325円)から。
6. Brevo
Brevo(英語、旧Sendinblue)は、送信時間の最適化やパーソナライズされたコンテンツ提案など、複数のAI機能を備えたオールインワン型のメールマーケティングプラットフォームです。A/Bテスト、マーケティングオートメーションのワークフロー、リアルタイムAPIスキャン、CRM統合などの機能も利用できます。
価格:無料プランあり。有料プランは月額1,140円から。
7. Seventh Sense
Seventh Sense(英語)は、HubSpotやAdobe Marketo向けに提供されているメール配信最適化ツールです。AIで購読者の行動を分析し、最も開封されやすいタイミングでメールを送信できるよう最適化します。
価格:連携するプラットフォームにより異なります。HubSpot向けは月額80ドル(年払い、約12,400円)、Adobe Marketo Engage向けは月額450ドル(年払い、約69,750円)。
8. Jacquard
Jacquard(英語、旧Phrasee)は、自然言語生成(NLG)を活用して過去のメッセージやブランドトーンを分析し、効果的な件名、本文、コールトゥアクション(CTA)を作成します。
価格:要問い合わせ。
AIメールマーケティングに関するよくある質問
メールマーケティングでAIはどのように使用されていますか?
AIは、データ分析を通じて受信者ごとにメッセージをパーソナライズし、エンゲージメントやキャンペーン効果の向上に活用されています。
AIは営業メールを書けますか?
はい、可能です。営業メールの作成に加え、件名の提案、配信スケジュールの最適化、キャンペーンの効果分析なども行えます。
メールマーケティングでAIを使用する際に制限はありますか?
はい。AIはデータ分析やパーソナライズに優れていますが、顧客の心に響く人間らしい表現には限界がある場合があります。親しみやすいブランドトーンを確立したい場合や、個別に丁寧なコミュニケーションを行う場合は、人による確認や調整を意識することが重要です。





